私は介護士として認知症専門で8年程働いていた時に、言葉でのコミュニケーションが難しい、ご利用者様へのコミニュケーションツールとして、またご病気になられ制限のある生活で、お辛い思いをしている方々の心身のケアとしてアロマセラピーを提供してみたいという思いからアロマセラピストを目指しました。
そして、またもう1つ私がアロマセラピストを目指したきっかけは、施設や病院で働くスタッフの心身のケアにアロマセラピーが大きく役に立つのではないかと感じ、今後は働くスタッフのケアにも携わってみたいという思いでした。
福祉施設で働いていた中で、夜勤の業務やまた認知症ケアを通して、自分自身も心身のバランスを保つことの難しさを強く感じていましたし、また周りの職員が心身の体調を崩し離職していく姿を数えきれないくらいみてきました。介護する側の心身の健康状態が、ご利用者様へのケアの質に大きく関わり、それがご利用者様の心身の状態を大きく左右する事がわかり、職員の心身のバランスをとる事が本当に大切な事だと実感していました。
介護の仕事は大変な事も多いですが、それ以上にとてもやり甲斐のあるお仕事だと私は感じています。このお仕事は、ご利用者様との色々なコミュニケーションを通して人と関わる事を学び、心が通じ合う瞬間だったり、心に触れる瞬間だったりとても感性が磨かれるお仕事です。このお仕事に携わる方々の心身の健康維持のお手伝いがしたいと当時の私は思っていました。
2012年に日本ホリスティックケア研究所の学校を卒業してからは、施術の経験を増やしたいと思い、横浜市内のメディカル向けのアロマセラピーサロンに勤める事が出来ました。そのサロンは閉店を迎える事になり約7カ月ほどの勤務でしたが、肩凝りや腰痛、浮腫みなど、また喘息の方や脳腫瘍の術後の方、精神症状が出ていた方などたくさんの方々のお身体をトリートメントさせて頂く経験が出来ました。
そのサロンが閉店したタイミングでスクールの提携病院でのアロマセラピストのスタッフに欠員が出たとの事でベンゼルさんよりお話を頂き、病院内の患者様やホスピスの患者様、そして病院で働いていらっしゃるスタッフの方々へアロマセラピーを提供出来るチャンスを頂きました。2年ほどの勤務でたくさんの症例を経験でき、医療の現場とそしてそこで働く方へ、改めてアロマセラピーの役割が十分にある事を実感できました。そして、この頃には、医療の現場とそしてそこで働くスタッフの方々へのケアに携わりたいという想いが日に日に強くなっていました。
当時の私は、病院内やスポーツジムやレンタルスペースでアロマセラピストとして活動しながら、介護の仕事にも携わっていたので、病院での活動を通して感じたことや、福祉施設での福利厚生でのスタッフのケアにアロマセラピーの導入の提案など、勤務していた施設の介護長にお話をさせて頂いていました。
介護長や事務長も大変ご理解がある方で、私と同様に施設で働くスタッフの心身の健康維持に関してとても重要視されていて、定年まで働く事が出来る働きやすい職場作りのためにこれまでも沢山の取り組みをされていました。効果があるものなら何でも試してみたいと仰っていました。
そして昨年の2016年2月に、その施設のスタッフの方を対象としたイベントとしてアロマハンドトリートメントをさせて頂き、アロマハンドの感想や、ストレスの度合い、現状の健康状態などのアンケートを実施し、反応を見させて頂きました。サービスを受けられた全てのスタッフの方々はアロマハンドのサービスに大変満足されていました。そして9割以上の方がストレスの度合いが非常に高く、また健康面で大きく不安を抱えていらっしゃいました。ここでの反応を事務長にお伝えし、友人を通して知り合った、企業や病院内に福利厚生でマッサージ提供をビジネスにされている方のお力も借りて、福利厚生でのアロマと整体のサービスが同年4月より、この施設で開始されました。
月に1回ずつ、整体の日とアロマの日に分けて、スタッフの方は休憩内に15分のアロマハンド、アロマフット、整体のお好きなサービスを予約制で利用しています。私はアロマの日を担当させて頂いていて、このサービスが開始され少し経ってから介護士としての仕事を終えて、いま現在はアロマセラピストとして、この施設でスタッフのケアに携わっています。
わずか15分の施術時間でも、スタッフの方はとてもリラックスされ、いま感じている事を話されたり、施術をお受けになりいま現在のご自身の身体の状態を知ったりと、心身の不調の緩和にお役に立てていると実感します。職場の人間関係とは違う第三者の私達が入ることで、職場ではなかなか吐き出せない本音の部分が出せているのではないでしょうか。また整体の日もアロマオイルを焚きながらサービスを提供していて、施術の空間に入られるとすぐに皆様の柔らかい表情を見ることが出来ると聞いています。香りは心身のリラックスに大変効果が高いということも改めてまた実感しています。
施術のサービスだけではなく、スタッフの方の心身の状態を記録に残すこともしていて、特にストレス度が高く心身の健康に大きく影響が出ていると感じるスタッフの方の情報は、施設の担当の方に、個人的に伝えたくないような事を省き、お伝え出来る範囲内でお伝えすることもしています。
事務長からは、「スタッフが離職してしまう前に施設側でも出来る限りのサポートが出来る。スタッフがいま仕事に対して何を感じて、何を不安に思っているかがわかり、個々に合わせたサポートを考えられるから大変助かっている」というお言葉を頂きました。
スタッフの皆様からも、毎回楽しみにされているというお声や、当初は恥ずかしがられていた男性スタッフの方々も、他のスタッフの方にこのサービスを薦めて下さったりと、とても良い反応を下さっています。
社会的にも介護のお仕事の離職率は問題視されています。また介護のお仕事に就く方も年々減っていると聞きます。そんな中、アロマセラピーがこのような問題にお役に立てるのではないかと現場で活動してみて思います。
健康を維持する上で、自分の身体の状態を知り身体の痛みや疲れを取ることはもちろんのこと、心に抱えている思いを吐き出すことはそれ以上に大切であると私は思っています。いまの自分は何を感じてどういう思いでいるかを少しでも吐き出すことができれば、古い感情が外に出て、また新しい情報や新鮮な感覚が身体に入り、身体の中の感情の風通しが良くなると思います。アロマセラピーは特にこういった感情面でのバランスを保つのに大きく働きかけるという事をこの活動を通して更に感じました。
今後もアロマセラピーを通して、施設だけではなく企業で働くスタッフのケアや、その他にも多くの方々の心身の健康維持のお役にたてるよう、活動の幅を拡げて行きたいと思っています。
私は、学校を卒業してから勤めたサロンが閉店したこともあり、アロマセラピストとして沢山の時間を費やしてこられたわけではありませんでした。アロマセラピストとして離れずにここまでやってこられたのは、沢山の方々のサポートがあったからだと思っています。今出来る範囲でチャレンジしていくこと、細々とでも続けていくこと、自分のやりたい事を声にしていくことで、沢山のご縁が繋がり、沢山の方々のお力もお借りして私の夢が1つ現実になりました。
いま現在は、この活動の他に、長野のリゾートホテルでのイベントマッサージや、都内サロンでのビワの葉スチームと組み合わせたアロマトリートメントやマタニティアロマ、そしてご病気をされた方の出張アロマケアなどたくさんのチャレンジをさせて頂いています。
私はアロマセラピストになり、アロマセラピーを通して自分自身を内観したり、多くの気付きを得たり、夢を実現出来るという事を体感し、私自身、自分の可能性を大きく拡げられた気がします。今後も自分の可能性を信じて、アロマセラピストが活躍出来る場所を開拓していきたいです。