在宅アロマの症例 所澤いづみ
私はナースのセラピストとして、地域の医師・看護師・PT・OT・ケアマネージャー・介護保険事業所の方々と連携を取りながら、1人の患者やそのご家族をサポートする仕事をしています。リラックス効果や症状緩和の効果があり、「定期的に来て欲しい。」とご希望されることが多く、特にがん患者・リウマチ・パーキンソン病など種々の病気で歩行や外出することが難しい患者宅に訪問(出張)してアロマ&リフレのトリートメントを施術しています。
在宅での症例を紹介致します。
在宅ホスピス医が、大腸がん末期の女性(81歳)M氏の症状である下肢のだるさと浮腫、抗癌剤の内服による食欲不振にはアロマセラピートリートメントが有効ではないかと判断をされ、アロマについて 本人と家族に紹介されました。その後、ご家族から私に訪問アロマ希望の電話があり訪問が開始になりました。
M氏は会話もしっかりしており、身体的には支えがあれば室内歩行は可能な状態でした。
家族は、軽度の認知症の夫と長男家族4人の計6人家族で、キーパーソンは、長男の嫁で優しく介護をしていました。
初回トリートメント後、嫁から「お母さんの表情が良くなった。」
M氏から「気持ちがよく、足が軽くなりぽかぽか暖かい。」などの効果を言われ、週1回の訪問を希望されました。
それから、亡くなるまでの10ヶ月間で35回訪問し施術をさせて頂きました。
M氏は元気な頃、日本舞踊の師範をされおしゃれな方のようでした。トリートメント部位は、頭皮・フェイシャル・デコルテ(首~肩部)・下肢・背中で約60分のトリートメントをしました。顔のしみやしわを 気にされ、フェイシャルトリートメントが大好きで親戚や友人が見舞いに来られると「病気になる前より病気になってからの方が綺麗になったね・・」と言われ「アロマのおかげ」と喜んでいました。
病状が徐々に悪化し腹水が溜まっても腹部マッサージをすると腹部膨満感が 改善され、直後、尿が一杯出て腹部が楽になるようで、亡くなるまで毎回アロマを楽しみにされていました。
最期の時は、表情が無く、ぐったりして言葉が無い状態でしたが、トリートメント後は、表情が明るくなり、会話が少しですが出来るようになり、別人になったように元気になられた様子が家族にも私にも分かるほどでした。M氏を最期までトリートメントさせて頂き、私自身がかけがいのない大切な思い出や人生を頂いたように思います。
主治医からM氏が亡くなった日に、次のメールを頂きました。
「本日午前5時45分に逝去されました。私が昨日訪れた南房総からの帰り道に摘んできた花束をお見舞いに差し入れたのが昨夕6時ごろ・・その後11時頃まで意識があり、今朝5時にご家族がいつものように起こしに行ったところ、すでに安らかな時を迎えられているのに気がついたそうです・・。今朝私が訪問した時、手指末梢の体温もありましたので、おそらくその直前の呼吸停止であったと思われます。所澤さんのトリートメントを本日も待ちかねながらの旅立ちでした。・・・」
患者の命に寄り添う事ができ、深い思いやりを持った主治医や医療従事者と出会うことは、とっても重要であり、患者・家族にとっては大変幸せなことです。チームで患者やご家族をサポートしていく事は、お互いの信頼関係が根底に無いと上手くいきませんし、連携プレイが上手くいくことで在宅での看取りが可能になります。
今後、がん患者が増え、在宅に帰られた時に、その人らしい生活が出来るために私達セラピスト自身、「明日は我が身と考え、何をさせて頂くことで喜んで頂けるか・・・」など日々の施術の中で学びとることが出来るように感性を豊かにしていくことが重要であると思います。
所澤いづみ
英国IFA認定アロマセラピスト・ 英国リフレクソロジー協会認定リフレクソロジスト
看護師、介護支援専門員・ 日本アロマセラピー学会認定看護師
メディカルアロマ&リフレ Tori(とり) 代表
http://www.aroma-tori.com/