篠村みのり 筋ジストロフィー病棟でのアロマテラピー施術レポート

筋ジストロフィー病棟でのアロマテラピー施術レポート
by 篠村 みのり (IFA認定アロマセラピスト)

1950年代後半、マルグリット・モーリー女史によってイギリスに伝えられたアロマテラピーマッサージ。
マルグリット・モーリーは皮膚のアンチエイジングを研究し、精油の皮膚吸収プロセスを助けるために副交感神経系に作用するアロマテラピーマッサージを考案しました。結果的に、アロマテラピーマッサージにより不眠の解消やホルモンバランスの改善、痛みや不安の緩和など、心身における様々な症状の改善がみられ、イギリスでは補完代替療法として医療福祉機関で広く活用されるようになりました。
今回は、筋ジストロフィー専門病棟でアロママッサージを提供している卒業生の篠村さんに、病院での 活動の経緯と筋ジストロフィーの患者様へのアロママッサージについてレポートしていただきました。

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私が病院でのボランティアを始めようとはっきり思ったきっかけは、2011年5月初め、イギリスからIFA認定コースの校長、ジャーメイン・リッチ先生来日中のディプロマ授与式後のおしゃべりタイム。医療機関でアロマを施術する話題になった時に、ベンゼルさんが、「医療スタッフ対象で始めるといいわよ」、という言葉でした。まだ卒業したばかり(卒業後1か月)で間もないし、先輩達のように病気の患者さんのケアに携わるのはすぐには難しいなあ・・・と考えていたけれど、スタッフならいつもと同じ要領でできるし、課題のケーススタディーが終わって以来、卒業後開業した自宅サロンのクライアントもまだポツポツでトリートメントをする回数も少ないこと、このままでは手が忘れてしまうという焦りがあったこと、そしてサロンの宣伝にもちょうどいいかも・・・というねらいもありました。
まず取り掛かったのは、仮に車がつかえない状況でも歩いていける範囲の病院をピックアップすること。電話帳をめくり、近隣の病院を5軒書き出しました。そうすぐにはOKをもらえないだろうと思い、上から順に電話をかけ始めました。
私はひどいあがり症なので、「IFA認定のアロマセラピストです」「アロマテラピーの普及を目的としてボランティア活動をしたいと思っている」などのメモ書きを用意しておきました。
まず1軒目、ボランティアコーディネーターの方をお願いします、と申し上げたところ、担当の看護師長さんはお休みとのことで翌日改めてお電話差し上げる約束をしました。気を取り直して2軒目、同じように名前と要件を話し、担当者におつなぎいただくと、その場で、「うちの病院ではスタッフ対象のボランティアは前例がなく難しい。それよりも患者さんにやってもらえないか?会議にかけてみないとわからないが、もし出来ることになったら何人で来られるのか?」など、かなり具体的な提案をうけました。患者さんへのボランティアをすぐに受け入れてくれる病院はあまりないと聞いていたので、驚いて激しくどもりながらも、人数のことなどは改めて連絡する旨お約束し、電話を切りました。こちらの連絡先を聞かれたとき、自分の電話番号さえ思い出せないほど緊張していたので、それ以来は、手元に電話番号のメモを置くようにしました。5軒ピックアップしていましたが、初めの2軒でどちらも好感触が得られたので、他への問合わせは止めにしました。
次の日、一軒目の病院に再び電話をしたところ、電話口に出た師長さんの声がやさしくてほっとしたのを覚えています。内容は、ぜひともお願いしたい、早速詳細を決めるためのミーティングを、といううれしいものでした。2軒目の病院の方については、対象が患者さんであるということ、患者さんの人数が多いためセラピストが何人か必要そうであることなどから、ベンゼルさんに相談しました。こちらのほうは打合せの 時に、ベンゼルさんと、ベンゼルさんがご紹介くださった13期生の田名部さんが同行してくださることになりました。この病院は、重症心身障害児(者)病棟、筋ジストロフィー病棟を含む400床以上の大きな総合病院です。この病院内の重症心身障害児(者)病棟と筋ジストロフィー病棟の患者様にアロマテラピーマッサージを提供することになりました。
初めての病気の患者さんへのアロマに緊張しますが、頑張りたいと思いました。

2011年7月 (初回)

患者さんAさんは、歩行困難のため車いすによる移動、呼吸器を装着されている。
「私アロマ大好きなんですよ、寝るときはいつもラベンダー使ってるんです。」香りをティッシュに含ませて嗅いでいただくと、こうおっしゃいました。腕のアロママッサージを始めると、「気持ちいい…ずっとこうやってアロマのマッサージを受けたいって思ってたからとってもうれしい」、「私はね、ほんっとーうに、アロマに救われてるんです」と、アロマへの思いを熱心に聞かせてくださいました。指はとても細く過伸展の状態。 とても目が疲れていて、肩もつらいとの事で肩へのトリートメント。とても硬く、筋肉が硬く張っている。
頸椎、後頭骨下縁までほぐしてゆくうち、「目がぱちっとしてきた」とおっしゃり、ベッドからテレビを見るとき、いつも首をひねった状態になるので、首・肩だけでなく腰にも痛みがあることをお話しくださいました。背中を終え、肩関節をほぐし、肩から指先へマッサージして終了。「今日は朝からこんないいことがあってとってもうれしかったです。しっかり日記(脳内)に書きますよ。」と明るい笑顔! この方は首・肩から背中にかけてとても硬くかなりつらい状態と思われるため、今後しばらくは月2回の態勢でトリートメントを続けてゆくことになった。
意識のしっかりした患者さんに触れるのが初めてだったので、自分が思っている以上に緊張していたらしく精油の説明を間違えてしまった。また同じ理由で腕へのトリートメントは恐々になってしまい物足りないものだったと思う。座位の状態での肩のトリートメントもどう触れたらよいのかわからず、同行した先輩のアロマスタッフに交代してやってもらうことになってしまったが、今後は患者さんの反応を見ながら、少しでも 楽になっていただけるようしっかりやっていきたい。

2011年8月 (2回目)
先回からひと月近くたっていることもあり肩も首もパンパンに張った状態。後の予定が詰まっているとのことで正味20分少ししか時間がとれなかったこともあり、腕は省いて、肩甲骨下縁のあたりから後頭部下縁までを? トリートメントすることにした。首の上部のマッサージに入ると、「そこ、すごく痛いです」と仰ったので、圧を弱めて数回繰り返した後、肩にもどる。あわただしく最後のドレナージュをして終了。血行促進はできたかな、と思うものの、やわらかくなった!というほどの結果は出せず。 喜んではくださったが、次回からは移動をより 速くし、トリートメント時間の確保に努めたい。

2011年8月 (3回目)
今回初めてベッド上でのトリートメントのため、車いすでは出来なかった腰(特に右側がおつらいとのことで右腰)を重点的に行った。保育士さんに手伝っていただいてクッションを使って側臥位の体勢をとっていただき、腰のアロママッサージを行った。腰のあたりは、張っているというよりも、かちかち、と表現したくなるような硬さ。フリクションとリンギングを何度も繰り返す。20分間ほど続けると筋肉があたたまり、幾分やわらかくなったようだったので、残り時間はわずかではあったが右肩も行うことに決める。トリートメント後は夕食のためベッドを起こすとのことで、ベッドをおこしてくださったので、背中のニーディング、前回のトリートメント時に凝っていた首の上部に弱めに圧をかける。今回もやはり「あ~、ここ痛いですね~」とおっしゃっていた。
驚いたことは、クライアントが、夜間に動悸がおこって眠れなくなることがしばしばあるとのことだが、「前回来ていただいたとき、夜に動悸がおこらなかったんですよ! ほんとに嬉しかったの!」と、嬉しそうに報告をして下さった。

食事準備の時間に割り込みそうになってしまい、慌ただしく終了したが大変喜んで下さった。前回トリートメントしたその時には、あまりしっかりほぐしてあげられなかったと思っていただけに、動悸がおこらず眠れた という話は大変うれしく、また、アロマの効果をあらためて感じました。

篠村 みのり (IFA認定アロマセラピスト)
aromatherapy Sereno主宰  (千葉県四街道市)
ホームページ:http://www.aroma-sereno.jp/
携帯 090-6871-7536
E-mail: info@aroma-sereno.jp


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