病院でのアロマテラピー活動
「アロママッサージは人を前向きにする力もあるんだなぁと学びました」
清水直子 (看護師、アロマセラピスト)
私はVivatのスクールを卒業後、約2年弱の間、病院での活動に参加させていただきました。看護師として病院や在宅で患者さんと接することに慣れてはいましたが、セラピストとして患者さんにアロマをさせていただくことに、活動を始めたばかりの頃は緊張していたのを覚えています。
アロマを学びたいと思ったきっかけは、看護師として患者さんと関わる中で、医療ではカバーしきれない痛みやむくみ、精神的苦痛などの患者さんが苦しんでいる様々な苦痛を目の当たりにし、少しでもそれらの苦痛を和らげてあげたいと感じることが多くあり、患者さんにアロママッサージをしてあげられたら苦痛の緩和が少しでも図れるのではないかと思ったからです。
病院では、がんの終末期にある方やリハビリ中の方、認知症病棟に入院中の方などにアロママッサージをさせていただいていました。高齢の方も多かったので、「アロママッサージ」自体初めてという方も多かったですが、皆さん「気持ちよかった」「またやってほしい」と喜んでくださいました。2回目以降にマッサージさせていただくときは「楽しみにしてましたよ」「木曜日が待ち遠しいです」など、アロマを心待ちにしてくださる方も多かったです。普通に生活する私達もそうですが、特に病気で入院されている方々は様々な身体的・精神的な苦痛やストレスを抱えていらっしゃいます。治療により改善する症状もありますが、治療や薬の作用などではカバーしきれない苦痛もあります。アロママッサージをしても、それらの苦痛を完全になくすことは難しいかもしれません。でも、患者さんの身体のつらい部分をマッサージしたり、精油の効果やマッサージの刺激(ぬくもりや気持ちよさ)で精神面にアプローチすることで、施術前よりも患者さんから笑顔や「楽になった」「軽くなった」などの良い反応が見られました。次の施術を楽しみに待っていてくださるのも、アロママッサージを受けることで患者さんが良い影響や効果を実感しているからだと思います。患者さんにアロマをさせていただける良さは、つらさがある分アロママッサージの効果をより感じていただけることにあるような気がしています。
また患者さんにアロママッサージをさせていただくときは、お一人30分程度と時間が限られていましたので、その方の状態を拝見し、苦痛のある場所やどのようなつらさなのかを伺い安楽な体位をとっていただき、選んだ精油を嗅いでいただき使う精油を決めていました。特につらい場所は長めにゆっくり時間をかけてマッサージするようにしていました。でも30分は患者さんにとってはあっという間の時間のようですが、それでも帰り際には皆様良いお顔を見せてくださいました。
肺炎などで体調を崩され入院中に廃用性がすすんでしまった、80代の女性の方がいらっしゃいました。その方は入院前はご自分で歩けていましたが、入院中の移動は車イスでした。アロママッサージをとても気に入ってくださり、いつも楽しみにしてくださっていました。何度目かの施術中のことです。いつものようにお話しながらマッサージしていると、ご本人から「こんなにしていただいているんだから、頑張ってリハビリしないといけないなって気持ちになるわ。」との言葉が聞かれました。次の活動日にその方の病棟へ伺い探していると、看護師さんから「自主リハビリ中ですよ」と聞き、病棟の廊下を車いすを足こぎして自らリハビリしているその方の姿を見つけました。アロママッサージは人を前向きにする力もあるんだなぁと学びました。
病院での活動を通して、アロマが入院中の患者さんにとって楽しみの一つとなったり、苦痛を和らげることができたり、回復へ気持ちを後押ししたりと様々な良い影響・効果をもたらすことができると学ぶことができました。この病院のように、医療従事者の方々のご理解とご協力をいただける医療機関が増え、看護師やセラピストから患者さんがアロママッサージを受けられる機会がもっと増えると、患者さんの満足度や医療・サービスの向上につながると思います。アロマへの理解を病院の医師・スタッフから得られるように、今後は訪問看護の中で患者さんへのアロマの施術を行いながら、アロマの普及に努めていきたいと思います。